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機関紙 - あの人に会いたい7 医療法人伊左治医院 理事長 伊左治 友子さん 笠置町でただ一人の医師

あの人に会いたい7 医療法人伊左治医院 理事長 伊左治 友子さん 笠置町でただ一人の医師

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組合活動
 2020/9/7 12:50

 いさじ・ともこ=
1981年 関西医科大学卒業 第一内科入局
1983年 済生会泉尾病院 勤務
1987年 弘仁会大島病院 勤務
1995年 伊左治医院 開院


国は過疎地医療の実態把握し
地域に合った制度運用を幅広く

中山間地、過疎地の地域医療・介護をどう守るのか。京都の大きな課題です。昨年11月に行われた「医師偏在解消フォーラム」(主催:京都保険医協会)での、笠置町のたった一人の開業医の伊左治友子先生のお話が大きな反響を呼びました。“あの人に会いたい”今回は、笠置町で住民の命と健康を守るために奮闘されている伊左治先生にお話を伺いました。

――先生が医師になられたきっかけ、笠置町でどのようなお仕事をされていますか

伊佐治 私の出身は大阪の堺市。母が町医者をしていて、小学校5年生の時に私も母のような医者になりたいと思ったのがきっかけです。関西医大を卒業後、勤務医をしていましたが、結婚で笠置町に来ました。義理の両親が医院をやっていて、子育てが一段落して、本格的に医院を手伝うようになり今日に至っています。

笠置町の人口は1300人、府内で一番人口が少ない自治体で、住民の多くが高齢者。笠置町の高齢化率は50%を超えています。

私は町で唯一の開業医として、専門の内科だけではなく、外科措置や慢性疾患の管理、乳幼児健診や集団予防注射、認知症サポート医、保育所・小学校・中学校の校医、町の様々な委員会にも参加しています。また、介護保険の認定審査会、障害者認定審査会などもあり仕事が詰まっている状態です。これらの仕事は、ここでは私がやらなければ誰もやる人はいません。

当医院では、午前中は外来診療、午後は訪問診療、訪問看護も行っています。県境を越えて、隣接する奈良市の周辺地域へも出かけています。2015年より笠置町から引き継いでデイサービスセンター、デイケアセンターの運営もしています。笠置町では、社会福祉協議会のヘルパー派遣事業はありますが、なかなかヘルパーのなり手がなく、デイケアセンターも来てくれるセラピストがみつかりません。

――地域医療の課題はどの様なことがありますか

伊佐治 年々独居老人、老々世帯が多くなっており、高齢者の暮らしを支える医療を限られた財政・人員体制の中で少しでもいいものを提供することです。

独居世帯、老々世帯が増える中で、いわゆる「孤独死」と誰からも見放されて亡くなる「孤立死」を分けることが必要と思います。

「孤独死」は、亡くなられる瞬間にだれにも看取られることなく亡くなること。しかし、毎日、ヘルパーさんが家に行って、看護師さんが訪問し医師が往診してちゃんと支えていたら、たとえ亡くなる瞬間は一人でも孤独死では決してない。独居の方、お年寄りだけの世帯では、24時間診ていることはできません。過疎地では、そのように考えないと、在宅で亡くなることは出来ません。

また、誰からも見放された「孤立死」がないよう、行政や住民の皆さんと地域ケア会議等を通して必要な対応を行っています。

――国は、医療・公衆衛生を削減してきましたが、どうお考えですか

伊佐治 今回の新型コロナ感染症拡大で、国も“必要なものは必要だ”と分かったのではないでしょうか。保健所も保健師もずいぶん減らしてきました。医療関係の予算や人員を減らしてばかりでは、何かが起こったときに対応できません。

厚労省は、昨年9月に公立・公的病院424病院を名指しし、医療提供体制を削減しようとしています。「医師が足りない」問題でも、医師を増やすのではなく「医師の偏在を解消すれば医師不足は解消できる」として、『医師偏在指数』を2019年に示しました。

しかし、現場の実態を反映しているとは言えません。例えば笠置町では、開業医は1医院、医者は私一人ですが、厚労省が示す人口10万人当たりの内科系診療所では、全国平均が43・85であるのに対して、笠置町は73・1です。これは、人口1300人に対して医師が一人だからです。また小児科系も皮膚科系も同様に全国平均を上回るのは、他に医院がなく、私の診療所がどちらも標榜しているからです。ところが、こうして数字にしてしまえば「足りている」としか見えず、当院が診療所を止めればすべてゼロになります。そうした現実を国がくみ取っているとは思えません。

――地域医療を守るために、国・府に求めるもの

伊佐治 まず、過疎地域の実態をしっかり見に来てほしいということです。国が何をすればいいのか見えてくるのではないでしょうか。

もう一つが、医療法や介護保険法などを、その地域に合った、一番合理的で住民に喜んでもらえる制度として運用できるように、ある程度の自由を認めるべきということです。

例えば、認知症で、デイサービスを利用されている方がいて、自分ではお風呂に入れなく洗濯もできません。徘徊があるので毎日来てもらわないと、どこに行かれたのか分からなくなります。着替えを預かって洗濯をして、お風呂に入ってもらって、毎日送っています。ところが、介護保険ではその洗濯サービスは本来ヘルパーが家に行ってするサービスなので、経費は出ておらずボランティアのような形で続けています。笠置町に、「ヘルパーが家で個々に洗濯するのではなく、デイサービスに来た時に洗濯物をもってきてもらってまとめて洗濯をする制度にしましょう」と提案したのですが、町は「それは介護保険では出来ない。財源がない」「独自サービスをつくったら、利用者負担になる」といわれました。

私は、田舎だからこそ現地の人々が色々知恵を出して考えた地域に合ったやり方を、もっと国は認めるべきと考えます。財源問題もあり、医師を増やし施設の建設が直ぐには難しいなら、せめて国は、地方に合った形で制度が運用できる自由を与えるべきです。

私の母は、「医者の代わりはいるが親の代わりはいない」と、忙しい中でも時間を割いて学校の行事などによく来てくれていました。笠置町に嫁いだ時に「あなたは、医者の代わりもいないところへ嫁いだのね」と言われたことを時々思い出します。

限られた条件の中ですが、ここでの医師としての仕事は私に向いていると思います。住民の皆さんに『笠置町で暮らしてよかった』と思ってもらえる街づくりに貢献できればと思います。


京都自治労連 第1966号(2020年9月5日発行)より

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