機関紙 - 畜産業:畜産業者の育成に取り組む 「牛」一筋34年 京都府の畜産業を支える歴史ある畜産技術を次の世代へ
畜産センターでお話をうかがいました
京都府職労連:Aさん
JR綾部駅から北に車で20分の所に、京都府農林水産技術センター畜産センターがあります。センターでは、家畜の繁殖や育養の技術研究から経営サポートまでを行っています。
京都府は、今年4月から畜産人材育成研修制度をスタートさせました。新しい取り組みに奮闘するAさんに、仕事のやりがいや課題をお聞きしました。
府民の牛肉消費量は日本一なんです
取材の冒頭、Aさんから、牛肉の消費量や市場など国内の畜産状況と、京都の畜産に関わる歴史は古く、平安時代の書物に記録が残っていることや、明治5年に府営の牧場が創設されたことなど府内の状況を教えていただきました。
京都にも『京都肉』というブランド牛がありますが、生産量は多くありません。歴史があり、需要もある京都の畜産業ですが、府内の畜産業者は少なく、「都市化もありますし、経営者の高齢化も進んでいます」と、Aさんは京都の畜産業の課題を語ります。
また、収入が得られる規模の家畜を飼うには一定規模の施設が必要で、利益を得るまでの資金の問題から人工授精など安全に家畜を増やし育てる技術、衛生、農業機器など、初めて畜産業に参入するハードルは高いとAさんはいいます。
希望者の思いをセンターと関係機関の連携で支える
Aさんは、畜産人材育成研修制度の担当になる前は、本庁で4年間、新規就農者支援に携わってきました。「農業では、『宇治茶』や『京野菜』で就農したいという若い方々が研修に参加し無事就農してくれました」とAさん。畜産業ではもっときめ細かい支援が必要になってくると考えています。
今年4月からスタートした畜産人材育成研修制度に合格したのは1名ですが、将来の目標がはっきりしていて頼もしいとAさんは期待しています。「研修生の希望や目標にあったカリキュラムを組んでいきます。多岐にわたる課題に、センターにはそれぞれの課題のノウハウを持った研究者や技師と、隣接する農業学校や事業者の協力を得ながら研修してもらいます」と、これまで培ってきたノウハウへの自信と研修者への期待がうかがえます。新しい取り組みに「京都で安心して畜産業をスタートさせてほしい」とプレッシャーも感じているようです。
事業者に期待され府民に支持される仕事
「牛がすきで府庁に入りました」と照れるAさんは、大学の農学部を出て京都府庁に就職して34年が経ちます。勤務地は、今の畜産センターや本庁、京丹後市にある碇高原牧場など、部課の再編などで所属は変わりましたが「牛」一筋。牛の世話はもちろん、エサやり、子牛の出産、牧草づくり…。「牛は胃を4つ持っていて、食べた草を、時間をかけて消化するのですが、その時、すごく熱が発生します。牛は暑さに弱い生き物です」。夏はシャワーを浴びに喜んで寄ってくる様子を楽しそうに話すAさんですが、「個人の酪農家が、進化する畜産技術や経営や衛生のすべてを行うことは難しく、それを継承していくのも同様です」と畜産業の難しさを話します。取材した日も、牛舎では、家畜人工授精師養成の技術講習が開催されており、若い男女十人余が実践の講義に聞き入っていました。
「行政がどのように畜産業を支え、継承していくのかが難しいです」「農業従事者や畜産事業者から期待されることはもちろん、府民から『それは必要だ』と思ってもらえ、支持をえられる仕事がしたいですね」と仕事への思いを語っていただきました。
京都自治労連 第1968号(2020年11月5日発行)より