機関紙 - 【施設管理】安全な施設の管理運営…多様な技術習得とアイデアで施設管理 来場者が安全に動物園で過ごしてほしい
京都市立動物園は1903年(明治36年)に開園し、120年を迎えました。2015年にリニューアルされた現在の施設は、庭園のような庭のなかに動物のケージや展覧スペースがある落ち着いた空間が評判です。
今回はこの施設の保守・営繕を行っているAさんとBさんに仕事の様子や思いをお聞きしました。
人と動物が安全にすごせる施設管理
AさんとBさんの一日は施設全部を回り、建物や設備の点検をすることから始まります。「来場者が来園する前にひととおり点検します。来場者に何かあったら大変です」ときっぱり話すAさん。庭や通路の柵や設備の作動確認だけでなく、動物のケージの施錠、破損有無も重要な確認作業です。ゾウやキリン、ゴリラ、ジャガーなど様々な動物がいるため作業は常に緊張するとAさん。長年動物の飼育を担当してきたBさんもうなずきます。二人は常にトランシーバーを持ってお互いの安否を確認しながら作業をすすめています。
ひととおりの点検が終わると、園内施設の修繕をおこないます。園内の至る所にある植木・樹木の剪定や植え替え、直径10センチはある杭を打っての柵作りなどです。「普段は来場者に開放している芝生も定期的に立ち入り禁止にして休ませたり張り替えをします」「造園業者を入れて高所の樹木剪定や大規模な植え替えを行いますが多くは私たちで行っています」と園内を案内してくれました。
キリンの成長にあわせて柵の高さを上げたり、ゾウが柵内に生える木を倒さないよう木のまわりに鉄骨で囲むなど二人は動物飼育のケージや柵の修繕、補強なども行います。「来場者や飼育員の安全が一番大事。そして、動物の安全も大事。飼育員のリクエストや動物の習性なども考慮しながら設備の改修・改良を行います」とAさん。
二人の詰所には、ボール盤や溶接機などの工具や木材・鋼材など材料が積まれています。こうした製作の技術やノウハウは、専門家や他の動物園の同業者からアドバイスをもらいながら自ら習得しました。「業者を入れるにはお金と時間もかかります。『動物園』という特殊性や生き物を扱っていることから緊急性もある。現場にいて、現場を知る私たちがやらないといけない」と胸をはります。
研究機関としての機能「動物福祉」向上に貢献
二人の所属は「種の保存展示課」。名前のとおり、現在の動物園は絶滅危惧種の保存・研究など研究機関としての役割を担っており、京都大学をはじめ様々な研究機関と連携して、動物の生態研究・調査が行われています。
合わせて、世界的に「動物福祉」(動物が精神的・肉体的に充分健康で、幸福であり、環境とも調和していること)という考え方が広がり、動物園での飼育方法も変化してきています。40年近く動物の飼育を担当してきたBさんも飼育方法や展示方法が大きく変わってきていると言います。
「直近ではゴリラの腕力を測る器具を製作しました」と楽しそうに話すAさん。飼育員のオーダーで様々な実験・研究装置作製も手掛けます。また、ケージ内を動物が自由に動けるように丸太などで踏み台や足場を作るなど動物の生活空間の改良なども行っています。
Aさんは「この動物園もリニューアルして10年。施設や設備に更新が必要な箇所が出てきました。また、『動物福祉』の考え方から動物の生活空間の作り方や展示方法にも改良・改善が必要になってきます。私たちの仕事にも大きく影響し、まだまだ学習と技術の習得・継承が必要です」と仕事への思いを話してくれました。
京都自治労連 第2019号(2025年2月5日発行)より