伊根町は、京都府北部の丹後半島東端に位置する人口2000人弱の町です。近海に豊富な漁場を有していることから漁業が盛んですが、近年では「伊根浦舟屋群」の景観が国内外で認められ、年間37万人余の観光客が訪れ、観光地としても注目されています。
今回は伊根町企画観光課で働くAさんに観光業を支える仕事についてお話を伺いました。
直営の施設管理と運営で連日奔走
インタビューの最初に日頃の仕事について聞くと「町は約100台の駐車場と付随の公衆トイレを直営しています。今日は町営駐車場の駐車券やレシートの紙の補充に行ってきました」とAさん。駐車場は役場のパソコンで集中管理しているものの、駐車券や領収書のロール紙の交換、集金・釣銭不足などで現場を回ることも多いといいます。
また、月極め駐車場の更新や設備自体の更新などにも対応します。「警備や清掃は委託していますが、消耗品は役場がまとめて購入していますから、トイレットペーパーや洗剤を直接届けに行くこともあります」「消耗品の減りが早いイコール観光客が増えているとわかるのでうれしいですね。今日は何もなかったとホッとする日もあります」と笑います。
舟屋を買い取って町直営で宿を営業
伊根町は平成17年7月に、国の重要伝統的建造物群として選定されていた伊根浦舟屋群の「舟屋」を宿泊施設にして観光客を呼び込もうと、商工会と連携して施設改装や開業を支援する補助金制度を作りました。一方で、舟屋はそもそも個人の住居であり漁業を営む人の作業場であることから、一般の宿泊業とは違うノウハウが必要だったため、町自らが舟屋を買い取って経営のモデル事業を立ち上げました。
「暮らすように旅する」をコンセプトに地域飲食業者と連携、「宿食分離」をモデル化し、建物の改装、調度品の選定、光熱水費、消耗品に至るまで、ノウハウと収支を公開し、起業の促進と新規開業者を支援します。Aさんはモデルとなる宿が開業した年に会計年度任用職員として採用され運営をサポートしてきました。「町が直営で宿を開業するなんてすごいと思いました」「運営は観光協会に委託していますが、運営にかかる費用は町が出費しますからその選定や業者との契約は町が行っています」と宿の経営も大変そうです。
正規職員として採用されてからは、開業者への補助金申請の対応だけでなくこれから起業したい方々への説明や相談を商工会と連携して行っています。「町のモデル事業は順調。宿も増えています。女性の経営者が多いのが特徴ですね」とうれしそうです。
地域環境を守る条例の運用を担当
Aさんが正規職員に採用されたのは今年4月から。その前は同じ企画観光課で5年ほど会計年度任用職員として働いていました。「観光について幅広くかかわってきましたが、この4月からはさらに深さが増した気がします」とAさん。その深まった仕事のひとつが、景観条例の運用担当の仕事。観光客が増えてくると、観光案内や看板などを出したい宿や飲食店が増えてくるといいます。「今の景観にあこがれて伊根に来てくれる方々が多いのですが、舟屋や母屋と同じような家々が多いこの地域で場所がわかりづらいのも確かです」「建物はもちろん、看板なども大きさや色、形まで厳しく条例で決まっていますので、申請に対して許可不許可の判断が難しいです」「研修などで京都市内に訪れても、同じ景観条例を持つ市内の看板などが気になってしまいます」と苦労しているようです。
Aさんは、他にも就労支援や町内の雇用促進なども担当しています。「町内の企業が求めている人材や、伊根町で働きたい方が希望する働き方をしっかりつかんで支援していきたいですね」と話します。「どの仕事にも言えることですが、この地域や住民に根ざした仕事をしていかないといけないと考えています」と思いを話してくれました。
京都自治労連 第2017号(2024年12月5日発行)より